SRIの概念

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SRIの概念

SRIの概念は今丁度変革期にあります。従来から、SRIは社会的責任投資(Socially Responsible Investment)を示し、一般的には、「企業への株式投資の際に、財務的分析に加えて、企業の環境対応や社会的活動などの評価、つまり企業の社会的責任の評価を加味して投資先企業を決定し、かつ責任ある株主として行動する投資手法」と理解されてきました。そして広義には、「社会性に配慮したお金の流れとその流れをつくる投融資行動」を示すものとされてきました。具体的には投資対象も、株式以外にも債券投資や、プロジェクトファイナンスへの融資、地域社会の健全な発展を目的としたコミュニティ投資なども、その投融資決定プロセスにおいて社会的責任の評価が加味されていれば社会的責任投資の範疇に入ります。

また株式投資の場合は、経営者に社会的配慮を働きかけることで企業の社会的責任を果たさせるという行動(株主行動)もSRIの重要な柱の一つといえます。しかし、地球環境問題の深刻化、地球規模の貧困問題の激化など時代の流れを反映して、欧米の投資家の間では、もはやSRIはSocially responsible investment(社会的責任投資)の略ではなく、Sustainabile & Responsible Investmentあるいは、Sustainable investmentないしは、Responsible Investmentと言い換えられるようになってきました。

この SocialからSustainability への変化は単に言葉の変化だけでなく、SRIの内容が変遷していることを示しています。すなわち、SRIが投資家の社会的(Social)な価値を実現する手段としてのSRI(Socially Responsible Investment)から、社会の持続可能性(Sustainability)の追求と企業の包括的な価値を評価するSRI(Sustainable and Responsible Investment)に替わりつつあるのです。

なお、ここで持続可能性とは、ベルリンの壁が崩壊して東西対立が消滅した時期に世界的にクローズアップされてきた概念です。ベルリンの壁消滅の2年前の1987年に「国連環境と開発に関する委員会(通称:ブルントラント委員会)が出した報告書『Our Common Future(我々共通の未来)』 において、「Sustainable Development (以降持続可能な発展 )」が人類の課題として取り上げられました。そこで「Sustainable Development とは、将来世代のニーズに応える能力を損ねることなく現在世代のニーズを満たす発展」と定義されました。

ここで「将来世代のニーズに応える能力を損ねない」とは地球環境資源が有限であることを認識した考え方です。その後国際社会においては、地球規模での環境破壊や貧富の差の拡大と悪化する途上国の貧困問題などの社会問題が、人類社会の存続を脅かす可能性が強く認識されるようになり、現在では「持続可能性」という言葉には、環境面と社会面両面での人類社会の持続可能性を意味する言葉となっています。

そして持続可能な社会構築のために、企業社会が「持続可能性」をビジネスの中に組み込むことが不可欠と考えられるようになると同時に、新しいSRI-Sustainable & Responsible Investment―は、こうした企業の持続可能な社会構築を支援する投資活動と位置づけられるようになってきました。

その中心となる投資手法は、環境や人権などの社会問題、および、企業の透明性を示すコーポレートガバナンスに対する企業の取り組みを投資評価基準に組み入れることです。なお、環境(Environment)、社会(Social)、コーポレートガバナンス(Governance)をあわせて一般的にCSR課題とされますが、SRI関係者の間ではこれらの3つの頭文字をとって「ESG課題」と称されるようになりました。従来のSRIでは、スクリーニング運用として、財務情報の分析とESG情報の分析の両面を行って、両面で高く評価されたものを投資ユニバースに入れるという手法が中心でしたが、2007年以降は、企業価値を評価するためには、ESG情報と財務情報は不可分として、両者を一体化して企業評価する「統合」アプローチが増えてきています。
なお、これらESG課題に関して、株主として企業に対して積極的な取り組みを求めるなどの株主行動(engagement)もSRIの重要な要素です。

SRIの歴史が長く、情報やデータが整備されている米国のSRI市場では、SRIを以下の3分類で行ってきました。

1. スクリーン運用
対象銘柄の環境・社会的側面を評価した(=ソーシャルスクリーンを経た)株式・債券への投資。スクリーンには、倫理・社会的理由から特定の企業や業種を排除するネガティブスクリーンと、業種業態にかかわらず各業種の中で社会的に優れた取り組みをしている企業を選択するポジティブスクリーンがある。

2. 株主行動(engagement)
株主の立場から、経営陣との対話や議決権行使、株主議案の提出などを通じて企業に社会的な行動を取るよう働きかける。

3. コミュニティ投資
上記の2つが主に大企業を対象としているのに対して、主として地域の貧困層の経済的支援のための投融資。

これに対して、欧州では、以下に示した通りに分類しています。

図表2)Eurosif によるSRIの分類
コアSRI 倫理的ネガティブスクリーン 多数の排除クライテリアを適用したもの
ポジティブスクリーン(ベスト・イン・クラス) 責任ある事業に対するコミットメントのある企業、そういう製品・サービスを提供する企業を積極に投資する
 
 
ベスト・イン・クラス方式 業種セクター毎に社会・環境・倫理の面で優れている企業を選別する
パイオニアスクリーン/テーマ型 低炭素社会や持続可能な経済など、社会・環境・ガバナンス問題に関連するテーマ型投資。水資源やエネルギーなど特定のセクターへの投資という形をとることも
単純な排除スクリーン: 特定の業種(タバコ、武器製造、ポルノ、動物実験など)を投資対象から排除する
  規範によるネガティブスクリーン 国際的基準や規範にもとづいた排除スクリーン(著者注:OECDの多国籍企業ガイドラインや、ILOの労働基準や、UNのグローバルコンパクトなどを指すと思われる)
エンゲージメント エンゲージメントは、企業により責任のあるビジネスを促すため、あるいは投資リターンを上げる手段として運用者が活用する。株主としての権利をバックに経営者との対話をすることから議決権行使を含む
統合 運用者が、財務分析にガバナンス・社会環境倫理のリスクを組み込んで企業評価をする

出所)Eurosif'European SRI Study 2006'より大和総研で仮訳

なお、日本におけるSRIの基準については、日本SRI年報2007(PDF)の中のデータ編 "SIF-JapanによるSRI投信の基準" をご参照ください。

社会的責任投資の意義

従来、投融資の判断では収益性や財務的安定性などの財務情報がその判断のベースでしたが、社会的任投資では、こうした財務情報以外の、環境や社会的側面といった要素を投資判断に必要としています。では、なぜ財務情報だけでは判断材料として充分でないのでしょうか?環境や社会的側面の情報を必要とする動機・背景は以下のようなものが考えられます。

1. 倫理
宗教的信条や個人の価値観などから社会的に望ましくないと投資家が考える特定の企業や業種を投資対象から排除する、あるいは、積極的に投資するという考え方。

2. 社会運動
企業に働きかける社会運動のひとつの形態として、株式の支配証券の側面に注目し、株主としてのガバナンスの観点から企業に影響力を行使する。

3. 企業価値評価
相次ぐ企業不祥事などから、CSRの取り組みが企業価値に影響を与える事例が増加するとともに、社会的側面の評価が企業価値判断に不可欠という認識。

4. CSR推進の手段
EUでは、EU域内の企業戦略としてCSRを推進しているが、CSRを促進する手段としてCSRを投資評価に組み入れたSRIを推進する立場。

5. 株主責任の視点
この考え方は、年金基金、特に公的年金基金の巨大化に伴い、株主としての年金基金の存在感が強まる中で大きくなってきました。すなわち、株主投資家には、単に自分の利益を最大化するだけでなく、企業の最終的所有者として、より良い社会のための資源配分に貢献し、かつ企業に対して世の中を良くしていくように働きかける義務があるというものです。

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