Vol.1 後藤 敏彦氏

SRIが日本でも知られるようになり、金融機関、企業から注目を集め始めています。しかし、一方で現実の資産残高の伸びは近年のヨーロッパやアメリカに比べ小さいようです。その市場の成長を阻む課題とはなんでしょうか?

個人的には、2つ要因があると思います。一つは「政府の限界に対する認識」ともう一つは間接金融中心の資金調達システムです。

「政府の限界に対する認識」とはどういう意味ですか?

ヨーロッパの政府は「政府の限界」を知っています。持続可能な社会は政府の力だけで実現するのではなく、「市民・企業の積極的な参加があってからこそ実現する」ということをよく認識しているのだと思います。
例えば、英国では英国では年金法の改正で、SRIを年金基金運用の視点にいれているかを開示させています。フランスでは、持続可能性報告書の発行が一定規模の企業に義務づけられています。その結果、情報開示が進み、ヨーロッパのSRIの発展に寄与しています。
企業や年金基金を巻き込んだ持続可能性政策は、政府の力の限界を認識しているからこそ実現する政策といえるでしょう。 日本の場合は、まだそういった認識が弱いように思いますね。

日本が間接金融中心であったことはなんとなくわかります。

そうですね。日本おける資本調達は銀行による融資という間接金融中心になりたってきました。アメリカでは、「社会を変えたければマーケットの原理を利用する」という認識があるように思います。その結果、市民は自分のお金の投資先を社会的責任で選択するという行動をとってきました。その行動の結果、SRIが発展したのですね。日本では、やはり間接金融中心に企業が資金調達し、市民も資産運用といえば銀行に貯金するという行動をとってきましたから、社会をかえるために自分の基準に基づいて投資するという土壌がない。これがSRI市場の伸び悩みの根本原因でしょうね。日本人の資産が、過去にもっと株式に回っていればSRIはスムーズに発展したかもしれませんね。

後藤さんは、長く「企業と環境」という視点でNGO活動をされてきました。そういった観点からSRIに何を期待しますか?

私は長らく、企業は持続可能な社会の実現に対して何ができるかということを考えて、行動してきました。なぜなら、企業活動なしでは21世紀における人類の存在はないからです。企業を持続可能な社会づくりにどうやって巻き込むかが鍵になってきます。SRIは持続可能な社会に資する企業を育てるツールです。

持続可能な社会はどうすれば実現するのでしょう?

社会(市民)のウォッチによって良い企業を育て、悪い企業を排除するということでしょうね。私は、ながらくNGO活動に携わっていますが、NGOというのは本当に多様な目的で存在するものです。それぞれの価値観で活動しますから、様々なよい企業像の軸が存在しうるわけです。
例えば、「原子力はだめ」という価値観もあるし、「原子力も上手に使えば有効なエネルギー源」という価値観もあります。SRIは投資家のそれぞれの価値基準で投資し、その人にとって良い社会を作り上げる手法です。そういう意味で多様な価値観をもつNGOは、SRIを促進するうえで社会に様々な価値観を提示するという役割を果たすでしょう。

SRIというと日本ではエコファンドからはじまりました。企業も環境経営に関してはやらなければならないことは良く分かっているようです。しかし、近年、CSRの概念のように社会「SOCIAL」というキーワードが入ると、とたんに何をどこまでやればよいかわからなくなっているようですが、GRIの理事としてなにかアドバイスはありますか?

環境マネジメントというのは定義があるから簡単なのです。対象は地球環境で、自分がコントロールできる範囲でマネジメントシステムを作ればよいからです。
しかし「社会性」となるととたんに難しくなります。それは、当然のことなんですね。

それはなぜですか?

社会性とは「社会との相対関係の中で見えてくるもの」であり、定義していくものだからです。つまり、何に対して活動をするかという範囲を自分で決められないということです。
また、社会性に関しては、企業が全てのステイクホルダーの価値観に併せて活動を行うのは不可能なのです。私が、企業のみなさんに申し上げたいのは、社会性に関して何が重要かについて「自分できめる」ということです。「わが社は社会性に関してはこれが重要だと思う。なぜならこのような理由があるから。だから、こういった活動をします。」と社会に対して自社の社会性への取組みに関する正当性を主張すること重要なのです。

それは経営戦略そのもののような気がしますが。。。

社会性戦略を考えるのは、まさにCEOの仕事なのです。社会性戦略構築は「自分たちの会社はこういう会社である」と主張する絶好のチャンスです。
GRIガイドラインには社会性に関して何をすべきか、何を発信すべきがのCore(コア)になるものは入っています。そのCore(コア)の社会性は当然に取組むべきものとして捉えてもらって、+α(プラスアルファ)で各企業がどのような取組みをするかについて、ぜひCEOには考えてもらいたいですね。

なるほど。最後にSRIに関して、SIF-JAPANに対して一言。

若い力に期待したい。若い原動力がもっともっと育って欲しいです。

ありがとうございました。
(聞き手:鷹羽 美奈子 社会的責任投資フォーラム)

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